ADMIN TITLE LIST
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


珈琲を飲んで店を出た。雨は止んでいた。初めて降りる駅は勝手が分からない。分からないなりに雨をよけるために目についた喫茶店に飛び込んだ。喫茶店の主人はぱりっとした白シャツに黒い蝶ネクタイをつけ、黒一色のシンプルなエプロンをして、銀縁のメガネが似合っていた。コーヒー豆はイノダのアラビカを使っている。イノダコーヒーなつかしい。「三条へ行かなくちゃ、三条堺町のイノダっていう珈琲屋にね」 
マスター(店主とかオヤジではなく外見がどうしてもマスターと呼びたくなるそれなので仕方ない)のホットドックをつくる動きとか独特の布を使ったドリップのやり方を見ているのは楽しかった。使い込んだステンレスの鍋や、木製のデロンギ(初めて見た)、擦り切れたフローリング、緑の窓枠。カップを置く時の陶器同士が触れ合う親密な音、チャン。
文庫本を取り出し読み進めていると、外の通りを駈ける小学生の元気な声が聞こえた。何気なく目をやるともう雨は止んでいた。青空さえ出ていた。会計をすまし、店を出てぶらぶらと坂の方へ行ってみた。緩やかな上り坂で、適当に西に折れると寺が見えてきた。階段を上り納骨堂を抜け更に階段を上ると、ささやかなトレッキングコースが表れた。丸太で大雑把に作られた階段を上り進むと展望台の様な場所に出た。多分展望台なんだろう。展望という目的以外には使えない様な空間だった。この丘と言ってもいいほどの小高い山の頂上からは辺り一面を見渡す事が出来た。マンションが多い。思ったより-マンションがこんだけ建っているだろうなという予想をしたことなんかなかったけど-多い。こんな風に、ふと街というものを眺望する機会が何気なく訪れると、そこに信じられない程の人の生活があることが不思議になる。小学生の頃漢字ドリルで何度も何度も同じ漢字を書いていると見慣れたはずの字が単なる記号にしか見えないようになった、そういう感覚と似ている。不思議だと思う。なぜ人間がこんなに固まりあってコンクリートの中に住んでいるんだろう。なんでこんなに人間がいるのだろう。なんでみんなその理由を僕に打ち明けてくれないのだろう。
キタムラカメラの下品な看板が小さく見える。もっと地味にするべきだ。空から誰か見てるかもしれないのに。それは神様かもしれないのに。でも世界に対してとにかく目立つという目的には成功している。大成功と言ってもいいかもしれない。などと考えていたら電力会社の制服を着たおじさんが缶コーヒーを手に上ってきた。
「いやぁ、いい場所ですね。こんないい場所があったなんてわたし知りませんでした」
「そうですね」
自分ではきちんとそうですねと言ったつもりが掠れて正しい音を構成しなかった。20時間程人としゃべらないと第1声はいつも物の怪じみている。
「そうですね」と咳払いをした後で言い直したが、おじさんはあからさまに興味を失ったようで、ぷいと向こうを向いてしまった。悪いことをした、申し訳ないと思った。
風が少し弱くなった。夕方4時の終わり頃、道路はどうも混んでいる。向こうの山の上を鳶か何か、猛禽類が飛んでいる。
スポンサーサイト



| HOME | 財布>>


このコメントは管理者の承認待ちです
【2012/11/28 20:24】 | #[ 編集]

このコメントは管理者の承認待ちです
【2013/01/24 05:25】 | #[ 編集]

このコメントは管理者の承認待ちです
【2014/07/24 02:28】 | #[ 編集]

このコメントは管理者の承認待ちです
【2014/07/26 15:37】 | #[ 編集]

このコメントは管理者の承認待ちです
【2014/08/17 13:38】 | #[ 編集]

このコメントは管理者の承認待ちです
【2014/08/19 22:41】 | #[ 編集]















管理者にだけ表示を許可する



| HOME |

Design by mi104c.
Copyright © 2018 ワルマネット2, All rights reserved.



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。