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22時を回ったドーナツ屋には22時にしては多すぎるくらい客がいたが、それはドーナツ全品100円セールをやっていたからで、僕の前に並んでいた太った女性は9個も買って持ち帰っていた。でもついたポイントはたったの42ポイントで、合計で今297ポイントになりました、と女性店員が愛想よく言った。

僕はブレンドコーヒーとオールドファッションを注文した。後ろに並んでた初老の男は「エンゼルクランチとブレンド」と注文した。それは何か素敵な魔法のような響きだったが、商品名は本当はエンゼルフレンチだった。
彼は僕の3つ隣の1人席に座ってエンゼルクランチを食べ、コーヒーを飲み、タバコを呑んだ。しばらくすると、彼が注文するときレジを担当した女の子の店員が「コーヒーのおかわりはよかったですか?」と近づいてきた。彼はおかわりを頼み、女の子がコーヒーを注いでいる間にセカンドバッグからCDケースを取り出し、にこっと笑って「これが新しいのだから」と言ってそれを女の子に渡した。彼女は口角だけを上げる困ったような笑顔で「ありがとうございます」と言ったが、彼の方はすごく満足そうに微笑んでいた。

通路を挟んで話し合っている30代半ばくらいの女性2人連れの話し声がBGMとBGMとの間に聞こえた。
1人は茶色い髪をして、1人は黒い髪をしていた。茶色い髪のほうが語気を強めて、音節を区切って、「だって、長女で、しかも、女の子なのよ」と、長女で男の子であることの方が自然だという風に言った。その後にすぐ「間違えた。女の子で、しかも長女なのよ」と言い直したが、黒い髪の女は「うん」と答えただけだった。

僕は読みかけの「オリバー・ツイスト」の上巻を30分かけて読み終わり、下巻がなかったので、バッグに入れたままになっていた「勝者に報酬はない」を読んだ。その間に2回コーヒーのおかわりをして、5本タバコを吸った。カフェインとタールで口の中が苦々しくなったので、店を出て地下鉄に乗った。金曜日の終電間際の地下鉄は混んでいた。誰かが朝の山手線並みだとか何とか言っていた。

僕の隣に立った47歳ぐらいのサラリーマンは鞄から「お茶畑の中からこんにちわ」と書かれたお茶パックを取り出し、隣の46歳ぐらいのサラリーマンに延々とこのお茶の素晴らしさについて喋り、それが終わると46歳の方が47歳の方に、モン・シュシュには限られた人にしか知らされていない予約専用の電話番号があってそれを利用すれば皆が並んでいる中をすーっと追い抜いてちゃちゃっと買えてしまうのだ、その優越感たるや換えがたいものである云々と喋っていた。「そんなにおいしいの?」と47がニタニタ笑いながら聞くと46は、「結局希少価値があるからおいしく感じるだけですよ。きっと何も知らされずに食べてもそんなに感動するわけないですよ。」とニタニタ笑いながら言った。46が今一番食べたいのは、高島屋の1階にいつも行列が出来ている店のバームクーヘンだということだった。彼らはその一連のやり取りの中で実に多く笑った。3秒に1回は盛り上げる場所を作るという、コブクロのヒット曲作成方法の秘訣を実に忠実に会話に取り入れていた。

電車には他にも色々な人がいたが、判を押したように皆黙っていた。
遊びなれてそうな女は終始ケータイをいじっていた。遊びなれてなさそうな女も終始ケータイをいじっていた。
オタクらしい男はオタクらしいゲームをし、ビジネスマンらしい男はビジネス書らしい本を読んでいた。
しかし皆一様に酔っ払っていた。

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